脊柱管狭窄症の手術、「1年後の落とし穴」をご存知ですか?
「手術をした直後はあんなに楽だったのに、1年、2年と経つうちにまた痛みが、、、」 実はこれ、脊柱管狭窄症の手術を受けた多くの方が直面する現実です。
最新の医学研究(エビデンス)では、手術の効果は「術後1年をピークに、その後は徐々に低下していく傾向がある」ことが明らかになっています。なぜ、せっかくの手術効果が長続きしないのでしょうか?
1. 科学が証明する「1年後の壁」
世界で最も信頼性が高いと言われる米国医学雑誌『JAMA』や『NEJM』に掲載された大規模調査(SPORT研究やメイン州腰椎疾患研究)によると、以下のような驚きの結果が出ています。
術後1年目: 手術をした人は、リハビリや薬物療法のみの人に比べて、痛みや歩行能力が劇的に改善します。
術後4年〜10年: 時間が経つにつれて、手術をした人と、手術をしなかった人の状態の差がどんどん縮まってしまいます。
つまり、「手術は初期の改善には非常に強いが、長期的な快適さを保証するものではない」ということが、世界的な統計で示されているのです。
2. なぜ「その後」が悪くなるのか?
手術は、狭くなった神経の通り道を広げる「構造の修理」です。しかし、以下の問題は解決できません。
隣接椎間障害: 手術で固定した骨の「隣」の関節に負担が集中し、新たな狭窄が起こる。
筋力の低下: 手術時の切開により、腰を支える「多裂筋」などのインナーマッスルが痩せてしまう。
動きのクセ: 腰に負担をかける歩き方や姿勢が治っていないため、再び炎症が起きる。
多裂筋の脂肪変性に関するエビデンス
手術の侵襲によってさらに腰椎を支える重要な筋肉(多裂筋)が萎縮し、脂肪に置き換わってしまうことは多くの画像診断研究で証明されています。これが1年以降の不安定性や再発の大きな要因とされています
手術後の「3つのパターン」
実際に手術を受けた方の経過は、大きく3つのケースに分かれます。
改善するケース: 神経の圧迫が解消され、劇的に痛みが消える。
変わらないケース: 神経のダメージが深すぎたり、痛みの原因が別の場所(筋肉や関節の硬さ)にあった場合、手術をしても症状が残る。
悪化するケース: 手術による筋力の低下(多裂筋の萎縮)や、傷口の癒着、また「隣接椎間障害」といって手術した部位の上下に負担が集中し、新たな痛みが出る。
「このように、手術の結果には大きな個人差があり、もちろん手術が最善の選択となる方もいらっしゃいます。しかし、『手術をすれば誰でも必ず完治する』というわけではないのが現実です。
だからこそ、ご年齢や現在の症状の程度、そしてこれからの生活を考えた時に、今が本当に最適な時期なのか。その判断は極めて慎重に行うべきだと私は考えます。 手術という大きな決断をする前に、まずはご自身の体の可能性を最大限に引き出す道も、一緒に探っていきましょう。」
今回の記事の根拠(エビデンス資料)
① SPORT研究 (Spine Patient Outcomes Research Trial)
掲載誌: JAMA (Journal of the American Medical Association) 等
内容: 脊柱管狭窄症の患者を「手術群」と「非手術(保存療法)群」に分けて長期追跡。
結果: 術後1〜2年では手術群が圧倒的に良好でしたが、4年、8年と経過を追うごとに両者の差は縮小しました。これは手術の効果が永続的ではない可能性を示唆しています。
② メイン州腰椎疾患研究 (Maine Lumbar Spine Study)
主著者: Atlas SJ et al.
掲載誌: Spine (2005年)
内容: 8〜10年にわたる長期追跡調査。
結果: 手術直後の満足度は高いものの、10年後には手術を受けた患者の約3分の1が「再び強い痛みがある」と回答。再手術率の高さも指摘されています。

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